スオミの森の陰から
フィンランドの湖畔に移住した(?)日本人家族の日常や現地事情を書いています。
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「フィンランドの東郷ビール」
3月は日本の学期末、各教科の教科書も終わりに近づいてきた。歴史では今、江戸時代を勉強していて明治維新も近い。

社会科の補助教材である東京法令出版『グラフィックワイド歴史』の明治時代の章を見ると、東郷平八郎についてのコラムがあった。

日本海海戦では,指揮官としてすぐれた力を発揮し,勝利へ導いた。そのため東郷の名は,フィンランドで,ネルソンらとともに著名な提督の名をつけたビールの商品名になり,現在も売られている。

そして「↑東郷ビール」というキャプションのビール瓶の写真。

う~む、まだあったのか「東郷ビール」伝説。

東郷ビール伝説というのは、フィンランドに実際にはない「トーゴービール」なる銘柄がいかにもあるかのように、そしてそれが東郷への敬意だとか親日の証だとしてどんどん尾ひれがついて広まった話のことだ。

この経緯と真相については 「東郷ビール」なんてありません が詳しいが、簡単にいえば「アミラーリ」(「提督」という意味)という商品名のビールが各国提督の肖像画を変わりラベルにしていて、その1人が東郷平八郎だったというだけだ。

このビールは70年に生産開始、90年代初めに一旦製造中止となり近年復活したが、現在は変わりラベルではなくなってネルソンの肖像だけになった。だから東郷のラベルのビールが現在も売られているというのも正しくない。

提督ビールがスタートした当時は東郷はラベルセットに入っていなかったし、ラベルになった23人の中には、日露戦争で東郷の対戦相手だったロシアのマカロフやロジェストベンスキーも入っている。これだけでも東郷を記念するビールなどではないのは明らかだ。

まあたまたま東郷のラベルのついた瓶だけ見れば、これが変わりラベルだなんて思う人はいないだろうから、「日本の提督がフィンランドのビールのラベルになったんだ!」と思ってもしかたがないとは思う。

ところがこの東郷ビール伝説は広く流布していて根が深い。

ビール瓶のラベルを教室で見せて伝説に沿ったストーリーを教える社会科授業の様子を記したWebページもあったし、「フィンランドは親日」という話になると引き合いに出されるのが常で、著名なジャーナリストや政治家でも「東郷を讃えるビール」などと平気で書き、さらには「東郷はフィンランドの英雄」とか「フィンランドの歴史の教科書に出ていてフィンランドの子供はみんな知っているのになぜ日本の歴史では教えないのか」なんて意見もある。実際は、日露戦争についてはフィンランドの歴史の教科書に短く出ているけれども東郷の名はない。一般のフィンランド人は日露戦争といっても「聞いたことはあるかも」程度で、当然東郷の名など知らない人が多い。

一方、話がややこしくなるのは、同じデザインの「東郷ビール」は現在日本でも売られていて、それはオランダ産のプライベートビールに日本の会社が東郷のラベルをつけて売っているからだ。これについてくる説明書きが、どうやらまさに東郷ビール伝説を真実のように書いているらしい。私は実際に見たことはないので確実なことは言えないが、ネット上にあるその説明書きの引用などからするとおそらくそうなのだろう。

さらに悪いことには、どうやら真相を知っていながら、それでも子供たちをミスリードしようとする大人がいる。何年か前のある大手新聞の社説でも、真相を知っているわれわれには字面上間違いとは指摘しにくいが、何も知らない人が読んだらおそらく東郷ビール伝説と同じ印象、つまり「フィンランドでは東郷が尊敬されていて記念ビールまである」と思ってしまうであろう記述を見つけて、当時のフィンランド関係メーリンググループでもその表現の巧妙さに感心したことがある。

まあこういったことで「東郷ビール」、ひいてはフィンランドについての誤解が増幅されたりするのは困ったことだ。


テーマ:小学校 - ジャンル:学校・教育

この記事に対するコメント

先週教職の講座を受けました。面接対策担当の先生(名前は忘れた)が小学校か中学校かで必ず教えなければならない人物のひとりとして東郷を挙げ、「フィンランドでは尊敬する日本人としては東郷が有名で、東郷ビールというのもある」といっていました。ちなみに私は東郷ビールという単語をこのとき初めて知りました。小学校、中学校の社会科の時間は大逆事件とか与謝野晶子とかは習ったが、東郷は習っていません。
【2007/09/10 09:46】 URL | さと #- [ 編集]


さとさん、こんにちは。
そのような面接指導があるとは驚きました。情報ありがとうございました。
教職の試験、どうぞがんばってください。
【2007/09/10 17:58】 URL | Sommoro #- [ 編集]

おかげで良く分かりました
こんにちは。
日本の調査捕鯨のことで、今やユーチューブは、日本人とオーストラリア人の罵りあいの場と化していますが、積極的に日本を擁護してくれるフィンランド人が数人居ます。
彼らは驚くほど良く日本のことを知っていますし、フィンランドの映画に日本語の字幕をつけてアップロードしていたりします。
そういうわけで、フィンランドが親日国なのは本当なんだなと思いました。
・・・が、このブログを見て、たまたまそういう人たちが数人居るだけなんだと分かりました。
ただ、ソ連がまだ存在していたとき、日本で行われた東郷平八郎の生誕式典に、ソ連の猛反対を押し切ってフィンランドが参加したことがありました。

 今から40年ほど前にフィンランドに旅行した日本人男性の書いた本を読みました。
その旅行の趣旨は「美しいフィンランド娘とやりまくるんじゃー」という、とんでもないものなのですが、ヘルシンキ大学で講演したり、結構真面目な部分もありました。

その人がフィンランドに行って初めて知ったのが、フィンランドがロシアから侵略されて、勇敢に戦ったものの人口の1/4が死んで、もう駄目だというときに日本が日露戦争を始めたので助かったというものです。
その日本人男性は、フィンランドで知り合った女性から「そのことは小学校で習った」と教えてもらったそうです。
ひょっとしたら40年前は、そうだったのかも知れませんね。
今では日本人でもフィンランドが日本の同盟国だったなんて知らない人ばかりですから時代の移り変わりかもしれませんね。
フィンランド空軍のメッサーシュミットを見ても、ドイツ軍の国籍マークと区別できなかったり・・・。

あっそうそう。松茸の話はどうなりました?
韓国産が駄目になり、北朝鮮産が駄目になり、カナダ産に切り替えたらカナダ人が食べ始めて価格が上がって駄目になり、
そこにフィンランドの林野庁(あるいは森林庁?)が日本に売り込みに来ましたね。
日本の松茸に匹敵するほど質の良いものが、中ぐらいの皿に大盛りでわずかに2千円でした(フィンランド国内で)。
でもこれもフィンランド人が松茸の美味しさに気付いたら駄目になるだろうと言われていましたね。
【2010/05/30 15:15】 URL | とめ #ElJgphU6 [ 編集]

とめ さん
「学校で習ったこと」やその他伝え聞いたことなどにしても,記憶の中で変化するなどして実際の歴史や事実とはかけ離れたことを次第に信じてしまうこともあるということなのでしょうね。

マツタケについてはあまり聞くことがありませんが,去年も一昨年もあまりできはよくなかったようです。フィンランド人には,特に香りが受け入れられないようですね。

【2010/05/30 17:04】 URL | Sommoro #- [ 編集]


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