スオミの森の陰から
フィンランドの湖畔に移住した(?)日本人家族の日常や現地事情を書いています。
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歴史の試験~読解力の差
先日あった歴史の試験が採点されて返ってきた。

試験範囲はアメリカの開拓時代や中国の植民地化から革命、日本の近代化、ロシア帝国末期、フィンランドのロシア化政策とかなり広い。穴埋め問題もあったが記述式問題が主で、中でもフィンランドのロシアによる第一次抑圧時代については、予告されていたとおり論述式問題だった。A4用紙の1ページ全部、25行ほどの罫線がある解答欄に、息子は本番で20行ほどの回答を書いた。

200803his-esse.gif

採点は9点中4.5点で、先生のコメントは回答の下に短く、

- Laajuus

と書いてあるようだ。「広さ」という意味だが、もっと内容を広く展開させなさいという意味なのだろうか。息子はよくここまで書いたと私は思うし、フィンランド語の補助授業の先生に聞いても何が足りないのかよく分からないということだった。

歴史の先生本人に聞いてみればいいのだが、この先生は先日奥さんが出産したため育児休暇中で、不在なのである。

ここは教科書で3ページほどの章で、息子は試験前に教科書の内容をもとに作文して備えていた。その下書きもかなり長かった。あまり長いと憶えきれなくて本番でうまく書けないかもしれないから、重要な点を中心に短くしてはと言ったのだが、息子が言うにはたとえ内容が同じであっても長いほどよく、裏面にまでわたって解答を書く生徒も珍しくないのだそうだ。フィンランドで職業訓練の学校に通ったりして作文の課題をやってきている妻も同意見だった。

このようにフィンランドの試験では長く回答を書くことが多い。日本では学校で「要点をまとめる」とか「箇条書きにする」とか「一目で内容が分かるように書く」といったことをよくさせられたと思う。短くてエッセンスの詰まった表現がよい文章という傾向がある。こちらでは箇条書きは、もちろんあるけれども文章の中に内容を埋め込むことの方が主流に思える。

理科の教科書の比較のときも書いたが、フィンランドでは一目で分かることより文章がきちっとしていることが重要視されることが多いと感じる。そのためかビジュアルより文章での表現の比重が大きいと思う。フィンランドの子供の読解力が高いのはそういった文章を読み、そして書く練習が自然と多くなるからではないか。こういう状況の中では表現も文章表現が中心となり、すると読み手としては読解力が必要、という循環ができあがっているのではないかという気がする。

日本は逆で、要点の詰まった、見やすい、短い文で表現する訓練を詰むことで読解力がそれほどなくても内容が分かるような表現ができるようになり、そのぶん読解力の必要性は少なくなる。そうするとより内容を分かりやすくしなければならないという逆の循環になる。

まあ実際はそれほど極端ではないけれど、やはりこういった差はあるような気がする。

最近日本で「読解力が低下」と心配されているが、表現や伝達のスタイルがこのように異なるなら、読解力だけを取り上げて低い低いと心配しなくてもいいのかもしれないと思う。日本人はなにしろ「何々が他の国より劣る」ということにすごく過敏で、読解力が他国より劣っているとなると「読解力を上げなくては」という論調になりやすいのだけれども。


テーマ:子育て・教育 - ジャンル:学校・教育

この記事に対するコメント

こんんちは。
>表現や伝達のスタイルがこのように異なるなら、
>読解力だけを取り上げて低い低いと心配しなくてもいいのかもしれないと思う。
>日本人はなにしろ「何々が他の国より劣る」ということにすごく過敏で、
>読解力が他国より劣っているとなると「読解力を上げなくては」
>という論調になりやすいのだけれども
まさに,その通りだと納得します。
長文を読解したり表現したりするか,
要点・重点化する表現方法を重視するか,
それぞれの良さですもの。
グラフィックを表現スキルの一つとして効果的に使うか
文章の添え物として使うか・・まさに教科書の「テキスト」を
どう捉えるかにも通じていますね。
メディアの教材化の違いもあるのかも知れないし,
ゲームなどの遊びなど,小さな頃からの育つ環境を
是正するか,効率的に利用するか。。等の方針によっても
異なってくることでしょう。

日本の「良さ」にもっと着目して,
日本人自身,ぶれない方針を持っていいんじゃないかな・・と。
教育だけではなく,政治等も同様かも知れませんね。

お子様,本当に少しの間に,たくさんのことを学ばれているのですね。
すばらしい吸収力!
だからこそ,フィンランドの良さを,ご自分の中に刻んでいる所なのでしょう。
心から応援しています。
【2008/03/23 10:57】 URL | とし #IY7bLZJE [ 編集]

としさん
少しひやひやしながら書いたので、賛成していただきほっとしました。
そうですね、大人が「これは必要なんだ」と揺るがぬ信念を持って
まどわされずに教育にあたることは重要ですね。

応援ありがとうございます。まだ先は長いですが、親子ともどもがんばります。

【2008/03/23 13:08】 URL | Sommoro #- [ 編集]

Sommoro様
お久し振りです。暫くご無沙汰しておりました。
やっとこちらのネット環境が落ち着きましたので、ブログの更新を
再開しております。
これからも宜しくお願い致します。

私の子供の頃は、時代や地域の教育方針もあったのかも知れませんが、
寧ろフィンランド的な読解を教えられていました。
高校時代も、そういった教えられ方をしてきました。
その影響が、ブログなどにも出ている筈です。

ところが、私が社会人になる前頃から、様子が変わってきました。
長い文章が敬遠されるようになりました。
仕事上の報告書等もそうです。

私からすると、簡潔過ぎる、要点だけの報告書は、その意図がよく見えて
きませんので、見た後に、更に確認する作業が生まれてしまいます。

この時の回答ですが、口頭で答えるよりも、実は文章にした方が、推敲
できるので、考えが纏まるものです。
ですので、口頭の回答よりも、より有効な回答が得られると思っています。

時代の流れはあるのでしょうけれども、私個人的には、このままで良いの
だろうか、と心配ではあります。
【2008/03/31 13:35】 URL | 孤舟居士 #5mJJictk [ 編集]

孤舟居士さん
日本にいらっしゃるのですね。今頃はちょうどよい季節でしょうね。
ネットの接続については参考になりました。お疲れ様でした。

日本も文章の読解や論述についてはフィンランド的だったのが
ある時から変わったということなのでしょうか、そうとは知りませんでした。

> 私からすると、簡潔過ぎる、要点だけの報告書は、その意図がよく見えて
> きませんので、見た後に、更に確認する作業が生まれてしまいます。

なるほどそういうこともあるだろうな、というかフィンランド人に
とってはそういう感覚なのかなと思いました。

ご意見どうもありがとうございました。

【2008/03/31 22:28】 URL | Sommoro #- [ 編集]


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