スオミの森の陰から
フィンランドの湖畔に移住した(?)日本人家族の日常や現地事情を書いています。
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子音階程交代
息子の化学の試験の答案が返ってきた。

まあまあよくできていると思うが、中にこのような問題があった。

200711kemi13.gif


「H2, O2, N2 の意味を、図を描いて説明しなさい」という問題なのだが、それに対する解答「これらは水素、酸素、窒素からできた分子である」で、各元素の単語を vetystä → vedystä、hapista → hapesta、typistä → typestä と直されている。

息子は元素のフィンランド語名そのものを間違えていたわけではない。「から」を表す格変化の語尾を間違えたのだ。ちなみに molekyyliä(分子)の語尾も正しくは molekyylejä だと思うが、そこは直されていない。

フィンランド語は日本語の助詞のように名詞の語尾が文法的な格によって変化する。日本語の場合は名詞に助詞が付いてもそのまま連続するだけだが、フィンランド語の場合は音変化を伴うことが多い。「から」に当たる語尾は -sta または -stä なのだが、vety(水素)を「水素から」とするためにこの語尾を付けると vetystä ではなく子音階程交代という音韻法則が働いて t が d に変化し vedystä になる。happi の場合も p が1個になるような変化をし、さらに i が e に変化して hapesta になる、といった具合だ。

日本語でいえば、「一本、二本、三本」が「いちほん、にほん、さんほん」でなく「いっぽん、にほん、さんぼん」となるようなものか。

こういった語尾変化はかなり規則的ではあるが、その規則がとても複雑で、また本来のフィンランド語と外来語では変化の仕方が違ったりする。フィンランド語文法の難しさのひとつだ。

日本語の「いっぽん、にほん、さんぼん」が日本人にとって自然なものであるように、息子の場合、フィンランド語は現地で体で覚えたので、こういった語尾変化はほとんど意識しなくても自動的にできている。だからこのような、語尾変化の間違いを指摘されることはあまりない。

しかしそれも日常使う単語であればこそで、「水素、酸素、窒素」の変化形などは日常生活であまり使わないので自然には出てこなかったのだろう。これらの単語が外来語であるかのような語尾変化のしかたで書いてしまったのだった。

フィンランド語の語尾変化を複雑にする、この子音階程交代(Wikipediaの「フィンランド語」の項に説明あり)は、フィンランド語を習ったことのある人なら一度はぶつかる壁のひとつだと思う。もうひとつの音韻法則である母音調和は比較的簡単にマスターできるが、こちらはかなり長く学んでも結構間違えてしまうことが多い。間違えて喋ったところで分かってもらえることがほとんどだが、場合によっては大きく意味が違ってしまったりするし、子音階程交代が分からないと辞書を引けないことも多い。

子音階程交代はフィンランド語に限らず多くのウラル語に共通する性質でもある。しかもエストニア語やサーメ語ではフィンランド語より複雑だそうだ。以前、日本でのフィンランド語教室で、フィンランド語の他にはどんなウラル語を学習したいかという話になったときに、私が「母音調和があって子音階程交代がない言語」と言ったら、講師の先生からは即座に「それならハンガリー語」という答えが返ってきた。他にもハンガリー語は興味深い性質が多いので、いつか学んでみたいと思っている。ちなみにこの人こそ11月15日 で書いた『フィンランド語のしくみ』の著者である吉田欣吾先生なのである。


テーマ:北欧 - ジャンル:海外情報

この記事に対するコメント

子音階程交代は面倒ですね。「辞書が引けない事が多い」は非常につらいです。・・・文章ではほとんど変化した形で出て来ますので。知人がフィンランド作曲家の作品表を作る際に協力したのですが地名や人名がわからなくて苦労しました(汗)。

・・・あと、この記事はトラックバックされていただきました。有難うございます。
【2007/11/26 17:02】 URL | suomesta #A8v7laDo [ 編集]


固有名詞は子音階程交代も特別だったりすることがありますし、大変だったでしょうね。Kangasala は Kangasalla となるし Virrat は複数形の変化ですもんね。
トラックバックしていただいた記事も参考になりました。

【2007/11/26 23:23】 URL | Sommoro #- [ 編集]


既にご存知かもしれませんが本日(日本時間だと昨日)こんな本が発売されました。
http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08546
【2010/11/29 19:09】 URL | suomesta #A8v7laDo [ 編集]

suomestaさん
情報ありがとうございます。新しい文法本ですか。著者は吉田先生ですね。読んでみたいものですが,ここではそれもかなわず残念です。

【2010/11/29 21:38】 URL | Sommoro #- [ 編集]


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フィンランド語について・・・専門用語は極力省きます。 フィンランド語の特徴で「格変化が多い」は語られる機会が多いです。首都Helsinkiの場合、Helsin「g」in(ヘルシンキの) Helsin「g」ista(ヘルシンキから)と変化します。有名なラハティ交響楽団は「Lahden kaupu... スオミ・フィンランドの音楽&文化【2007/11/26 22:40】

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