スオミの森の陰から
フィンランドの湖畔に移住した(?)日本人家族の日常や現地事情を書いています。
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スキー休み
息子の学校は今週スキー休みだ。

10月18日の記事に書いたように、正式には「冬休み」なのだが通称スキー休みといっている。

休みの間は町の青少年課が主催する催しがいくつかあって、息子も参加を申し込んだ。月曜日はレーシングカート、火曜日はスキー、木曜日はスパといった具合。

今日のレーシングカートは、息子は初めてだったがすごく気に入ったようだった。町全体で3つの地点から出発し、各定員10名だったがうちの最寄のところでは18名申し込みをし、実際に参加したのは16人で、2組に分けて行ったらしい。参加費は交通・カート使用料等込みで5ユーロと大変安い。

安さといい定員超え処理の柔軟さといい、関係者には感謝しているのであるが、ひとつ言わせてもらいたいことがある。

この催しは町のWebサイトで見つけたのだが、申し込みの連絡先は担当者のファーストネームが書いてあるだけで、メールも電話も連絡方法が書いてないのである。集合地点も、聞いたことのない通称で書いてあり、住所などの記載はない。町のサイトで調べても出てこない。

青少年課に電話をしたところ申し込み先の電話番号を教えてくれて(だが記載されていたのと別人)、場所は、検索で調べた上説明してもらって分かったのではあるが、

どうしてその参加者募集のページに書いておかない?

あるいはリンクを張っておくだけでもいいのに。もちろん電話番号などはあまりWebなどに載せるのはよくないが、集合場所くらいは分かりやすくできないか。

さらにいえば、申し込みの受付時間も書いてない。日本のように9時~5時と決まっているならまだしも、こちらでは受付時間が短かったり曜日によって違ったりということもあるのに。

この種の怒り(おおげさ)はフィンランドで日常茶飯事なのだ。何かのお知らせや情報というと、以前から知っている人にしか完全には分からないように書かれている。修学旅行の持ち物の一件でも思ったが(⇒10月14日の記事)、別の学校で、終業式の案内が来たが場所が記載されてなく、当然学校だと思ったら実は近くの公共施設ということもあったりする。あるいは、何かの通知で「申し込みはメールで」と書いてあっても申し込みで何を知らせればいいかが書いてない。名前、住所、など必要そうな事項を書いて申し込むと後になって「両親どちらかの携帯番号は?」などと聞いてきたりする。最初から必要事項を書いておけばいいじゃないか。

このように、事情を知らない人に通知するときの作法がなってない。以前はひとこと言ったりもしたのだが、「みんな知っていると思った」「聞けば教える」という態度ばかりなので言うのもやめた。

その点、日本のお知らせというのは、本文に書いてあることをまた丁寧に

========== 記 ==========

の下に書いたりと、逆にくどすぎると感じることもある。私が外国人として知らないことが多いからであるとしても、日本式とフィンランド式は両極端のように思える。中間くらいだとちょうどいいのだが。


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テーマ:北欧 - ジャンル:海外情報

湖で長距離スケート
今日はタンペレ市の湖の上のスケートコースを滑ってきた。

200702luistelurata.jpg


フィンランドでは冬になると学校の校庭や公園などあちこちにスケートリンクができ、学校の体育もスケートが主になるのだが、湖は冬の間雪がつもってしまうので通常スケートはできない。スケートするには除雪してコースを作る必要がある。このナシヤルヴィ湖に作られるコースは1周4km以上のコースが2つ、両方をつなげてすべると8kmという長さのものだ。

このコースはときどき新聞に載ったりするので、1度は行ってみようと思っていたところ、今日ちょうど通りかかる機会があったのだ。

結構多くの人が滑りに来ている。が、さすがに広いので、しばらく滑っていくと人はもうまばらにしか見えなくなる。

コースの幅は5mほどか。氷はところどころ透明で真っ黒に見えるところがあり、ひび、というか氷の継ぎ目がその透明な氷の中に下まで続いているのが見える。氷の厚さは数十cmはあるだろうから、ひびがあるといっても割れる心配はない。

氷の表面にはところどころ薄く雪が残っていたりするのでとても滑りやすいというわけではないが、見渡す限り広い湖でスケートするのはなかなか気持ちのよいものだった。気温は -10℃ほど、風が当たるときは耳が痛くなった。

スケーターは老若男女、速い人も遅い人もいる。フィンランドでは、お約束のように男はホッケー、女はフィギュアスケートの靴を履くのだが、こういうところでは長距離用のスケート靴を履いて飛ばしていく人も多い。長距離のスケートはブレードが長くがっしりした作りになっている。自作なのか、アルミサッシのようなものを荒っぽく切ってブレードにしたとしか思えない靴を見たときはびっくりした。

コースの片方はクローズドになっていて、4.2kmのコースを息子は2周、われわれ夫婦は1周した。コースは無料で、維持のためのカンパを集めていると聞いていたのだけれど、お金を入れるようなところはなかった。

1周滑るのに20分くらい。なかなかいい運動になって、この寒さの中でも終わる頃には汗をかくほどだった。


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校内暴力と生徒指導
YLE放送のテレビニュースで校内暴力と教師の対応について取り上げていた。

校内暴力は、フィンランドでも増加の一途をたどっているそうだ。暴力とまでいかなくても、態度の悪い生徒に対して教師が現在の指導規則を遵守して対応するのが難しくなってきている。

2003年からは教師が授業を妨害する生徒を追い出すことができるようになったが、それ以外には態度の悪い生徒に触れることもできないためだ。体罰はもちろん禁止されている。

だいたいフィンランドの学校では、服装だの髪型だのといった細かい規則で教師が注意したりはしないので、態度が悪いというのは本当に困る生徒のことなのだろう。

一方、こうした生徒への教師の対応について、敏感にまた頻繁にクレームをつける親が増加しているという。フィンランドでも日本でも似た傾向ということだろうか。

教育学部ではロールプレイングなどで荒れる生徒の行為に対応する方法を学ぶようになってきているそうだ。

最近は授業中に悪態をついた生徒の胸ぐらをつかんだ教師が起訴されるといったことも起きており、教師は荒れる生徒への指導規則の詳細化を望んでいるそうだ。


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中学校でスウェーデン語
中学校は入学前に何度か体験授業があるのだが、今日、息子は中学校に行き、スウェーデン語の授業を受けてきた。

学区の関係で、現在の小学校からはほとんどの生徒が同じ中学校に行く。そのためクラスがそのまま移って先生だけ替った状態で授業を受けたようだ。

「教わったスウェーデン語、何か憶えてる?」と聞くと、「うーんと…、さあ…?」と言うので、私もスウェーデン語はちょっとしか知らないのだが、おそらく最初に教わるであろうフレーズを言ってみる。

Vad heter du ?

「あなたの名前は、って意味?」「そうだけど、だからスウェーデン語で答えてごらんよ」「わかんない」…まあいいか。

※ 実際のこの辺の会話はフィンランド語まじりだったのだが複雑になるので全日本語とした。

でも、先生にはスウェーデン語の発音がいいとほめられたそうで、「スウェーデン語も面白いかも」などと言っている。スウェーデン語は中学に入ると必修で、この前まではいやがっていたのだが現金なものだ。今日は帰宅してから日本の国語の勉強と、学校の英語の勉強と、フィンランド語での歴史の復習もしなくてはならなかった。1日に4言語というのはちょっとかわいそうな気もする(そう口には出さなかったけれど)。

「ほんとはフランス語をやりたいんだよ。」息子はフランスがお気に入りなのだ。食べ物とスキーでいい思い出があるかららしい。「ああ、やりなさいやりなさい。8年生になったら取れるから」。「でももう1言語は大変だし」。こうしてスウェーデン語は非フィンランド人にも必修なのかなあ、という話になるが確実なところはわからない。

ところで、中学校の体験授業はこれより前に化学と物理があったという。なんだ、あの中学校での実験授業(⇒2006/09/26の記事)は入学前の体験授業ということだったのか。


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味覚教育
17日付のAamulehti紙によれば、ヘルシンキ大学農林科学部の「味覚教育プロジェクト」で、小学生の食物嗜好に味覚教育がどのように影響するかが調査された。この教育の結果、子供の食わず嫌いは減り、さまざまな味や香りが認識できるようになったことが明らかになったそうだ。

味覚教育は1年おいて2期間行われ、1期間は1回75分の授業を週に1回10週間というものであった。子供たちはさまざまな香りをかいでみたり、「苦さ」、「激辛」を味わったり、いろいろな食材や料理の味や見かけを確かめたりした。

子供たちはなんと「うま味」についても学習している。Umami は今や国際的な学術用語になっているとは聞いていたが(⇒Wikipedia)、それを実際に学習しているとは。

調査の各段階で、子供が家でどのような食べ物をいやがるか、変わった食べ物に対してどう振舞うかが調べられ、これに基づいて拒否反応を示す10の食材がリストアップされた。それは

・ドイツ風のソーセージ
・魚のからし漬け
・ヤギ乳のフレッシュチーズ
・なす
・クスクス
・すし
・椎茸
・そば粥
・腎臓(キドニー)料理
・グァバ

だそうだが、この中ですし椎茸という2つの日本の食べ物があるのは驚きだった。椎茸は、ここ数年スーパーなどで時々見られるようになってきてはいるけれどもまだそれほどポピュラーではない。しかも傘も小さくて薄い、弱々しいものしか売っていない。

すしは、実際どんなものが供されたのだろうか。私は食べたことはないのだが、フィンランドで「すし」といって売られているものはすし飯が甘く、本来のすしとはかけ離れたものだということをよく聞く。逆に間違った味を教えているのでなければいいのだが…。

このプロジェクトでは2年生と5年生を対象としたが、低学年の方が見知らぬ食べ物への恐れ克服に効果があったそうだ。リストの中で子供たちが受け入れられる食物の数は、味覚教育前には平均3つであったが後は5つに増え、しばらく経過した後での追跡調査でも味覚の認識など学習の効果は残っているという。

味覚教育は小学校の教育に取り入れるべきだという意見もあるが財源が問題だそうだ。

スウェーデンでは教師への教育などがすでに進んでいるらしい。

私が(そしてフィンランドで多くの非フィンランド人が)思うには、フィンランド人はかなり料理や食材に対して保守的というか、新しいものを求めようとせずいつも同じような、可もなく不可もないような味の料理を食べる傾向がある。

外国旅行をよくする割には外国の珍しい食べ物をフィンランドで食べたいとかいった、食に対する貪欲さがないように思う。そのためか食品売り場の品揃えも乏しく、新しいものがなかなか取り入れられない。こういった教育をとおしてフィンランド人の食の範囲が広がればありがたい。

こんにゃくも試してみればよかったのに(笑)。


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こんにゃくを手作り
フィンランドでは日本食はなかなか手に入らないし、ましてヘルシンキから離れた田舎で日本食品店もない。日本から持ち込むのも難しいことが多いので、わが家ではかなりいろんな日本食を手作りしてきた。豆腐、納豆、うどん、そば、もちなど…。

こんにゃくも、元は粉だから日本から輸送しやすいんじゃないか。そう思って調べると日本こんにゃく協会で手作りキットを通販していることが分かったので、友人の住所宛で申し込み、転送してもらった。



こんにゃく手作りキット

それが週初めに届いたのだが、作るのは結構時間がかかりそうなので、土曜日の今日、息子と共にとりかかったわけである。

まず「清粉」をぬるま湯に少しずつ溶かす。これは簡単だった。次にときどきこねながら1時間ほど置く。

この間にだんだん固くなってくる。面白い。こんにゃくの匂いもしてきた。




さあいよいよ凝固剤を入れて2分ほど手早く混ぜる。ところが、すでに固まっているため混ぜようとしてもゲル状のものがばらばらになっていくだけでなかなか混ざらない。困ったなと思いつつも、混ぜすぎてはいけないらしいので成型に入る。




平たい容器に平らに延ばしつつ詰めていく。これで1時間ほど置くとべたべたしてこなくなる…はずなのだが、時間がたってもどうもまだねばつく。それでも切り分けてゆでることにする。

これをしばらくゆでていくとだんだん見かけも感触もこんにゃくらしくなってきたのでほっとした。




ゆでた後は水にさらしてできあがり。

作品は夕食のおでんの具になった。なかなかおいしく、特に息子は喜んでいた。だが、家中がこんにゃくの匂いで充満してしまった。フィンランドの家屋は換気がしにくいし、換気扇もよく効かないのでこういうときは困る。

味はいいのだが、細かい気泡が入ってしまっているし、いくらかムラがあって舌触りはいまひとつか。ビニール袋で混ぜると気泡が入らないらしいので、次回はそうしてみたい。


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Penkkarit
今日、息子はお菓子を入れた袋を持ってうれしそうに学校から帰ってきた。今日は penkkarit の日だっだ。

200702penkkarit.jpg

この何倍、現地で食べたのかは知らない…

Penkkarit というのは高校の最終学年の授業が終わり、春に行われる高校卒業資格試験(大学入学資格も兼ねている)の準備に入る日に趣向をこらしたトラックの荷台に乗って街へ繰り出し、お菓子を投げて通行人に振舞うというイベントだ。

Wikipedia に写真があるので参考に→http://fi.wikipedia.org/wiki/Penkinpainajaiset

この日を境に高校生は猛勉強の日々を送ることになるのだが、トラックは学校の庭も訪れるので子供には人気の日なのだ。

息子によれば、今年の高校生はスーパーマリオブラザーズをテーマとした仮装で、マリオやルイージはもちろんピーチ姫や"1up"もいたそうだ。スーパーマリオって、フィンランドでもそんなに知られたものだったとは…。

実は私はニュースなどで映像を見たことがあるだけで、実際にトラックを見たことはない。平日の昼間はだいたい仕事中だから。一度見てみたいものではある。



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『欲ばり過ぎるニッポンの教育』(3)
もうひとつ、この本ばかりではないが、フィンランドでは教師は修士以上ということもあって「フィンランドの教師は優秀」とよく言われるので、その点について一言。

私はどちらの国の教師がより優秀といえる材料は持っていない。しかし、今までに何度も書いたように、フィンランドでは授業日数が少なく授業時間も少なく、ホームルームも掃除もクラブも学校にはない。進路指導も生活指導も校外でのトラブル処理にも無縁だ。授業が終わっても長く学校に残って仕事をするということもないし休日にクラブの引率なんてこともない。こんなふうに拘束時間が短く、タスクは教科指導に絞られている。学級の生徒数も少ない。

だから良い指導ができて当たり前、とまでは言わないが、日本の先生だってこういう状況なら良い教え方ができる余裕も生まれてくるのではないだろうか。長時間労働、多岐にわたる仕事、大学級という土俵の違う日本の教師と比較するのはフェアでないだろう。

さらにいえば、「こういう指導をします」とか意気揚々なビジョンを示しながら実際には実行できなかったとしても、「事情があったのだからしかたないね」と個人を責めないというのがこの国の不文律である。日本だとずっしりと責任を感じ、追い詰められてしまうことが多いのではないだろうか。

親の方も学校には基本的に知育しか求めず、他の教育は家庭やサークルや地域社会で行われるのだが、これも親に時間的余裕があってこそだ。たいていのフィンランド人は5時には帰宅して一家で夕食がとれる。休暇は基本的に年5週間。子供と過ごせる時間が充分にあるのだ。

まあこんな社会構造の中だから、教師が「有能」でいられるのだと思う。

愚痴になるが息子が転校したときのこと、当時の担任にどういう手続きをしたらいいか聞いたら転校元の校長から転校先の校長に連絡するのだそうで、転校の件は校長に伝えておきますと言われた。が、時期が差し迫っても音沙汰がないので転校先の校長に連絡を取ったら何も聞いていないと言われた。伝言ゲームがどこで途絶えたのか知らないが、こういったトラブルはこの国ではよくあることで、実害がなかったから詳しくは調べなかったが、一事が万事これだから私は括弧付きの「有能」にしたくなるのだ。

有能かどうかはともかく、フィンランドの先生の方が自信にあふれているとは思う。もっとも教師に限らずどんな職業でも辟易するくらい自信家が多いのであるが。

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『欲ばり過ぎるニッポンの教育』(2)
前回に続いて、苅谷剛彦+増田ユリヤ著『欲ばり過ぎるニッポンの教育』のフィンランドに関する部分について。

まず、「フィンランドでは高校進学率が60%」と繰り返し書き、日本がそうであれば学校にまつわる社会問題は少ないだろうというが、フィンランドで残り30%が進学する職業学校で大きな問題があることは検証していないし、住んでいてもそんなことは聞かない。

フィンランドの学校での問題の少なさ(日本に比べて)は、別のところで書いてあるように、学校が知識の提供に目的を絞っていて日本のように生活指導を度外視しているという理由の方が大きいと思う。だから60%という数字を何度も持ち出す意図が解らないし、そもそも60%という数字自体が中学卒業後の「職業学校」を高校に含めるかどうかで恣意的に決められる。本にも書いてあるように、この職業学校からは大学へも進学できるし、「共同応募」で普通高校と併願もでき、単位の交換さえできる。こういう学校を高校と呼ばず高校進学率に含めない方が不自然であろう。実際、「職業高校」と訳している資料もある。これを高校に含めれば高校進学率は90%を超えることになり、日本と大差ないから60%という数字を強調する意味がない。

さらに、

これをフィンランドみたいに、たとえば大学進学率は15%でいいとか、誰もが行かなくてもいいんだ、という仕組みをつくっていれば

という記述はフィンランドの大学進学率が15%と誤解されやすいし、実際にこれを読んで誤解している人も書評やブログで散見される。

そもそもこの15%というのはフィンランドにおける大学進学率でもなんでもなく、「日本の高校進学率が60%だった頃の大学進学率」なのだが、フィンランドとの比較の中でこの数字を何回も持ち出すのだから誤解されてもしかたがないと思う。ちなみにフィンランドの実際の大学進学率はWikipediaによれば87%となっている。

また「フィンランドには大学が21校しかない」と何度も書かれているが、人口比でいえば1校あたりの人口は日本の1.5倍にさえならず、驚くような少なさではない。人口当たりの国立大学数でいえば、むしろフィンランドの方が何倍も多い。

フィンランドの高校の厳しさは、単位取得や卒業資格試験についてはそのとおりだが、日本の方が余裕があるというのはどうだろう。この本で「フィンランドの高校」というのは大学進学を前提とする普通高校を指しているのから、日本での比較対照は大学受験予定の高校生であるべきだろう。であればフィンランドの方が余裕をもって高校生活を送っているように見える。日本と違って予備校も塾も模試もないし、書店でも参考書や問題集さえ売っていない、受験産業のない国なのだから。

スウェーデンの教育とフィンランドとの違いとして、スウェーデンで間違ったことを平気で教えてしまっても、あとで正せばいいとして頓着しない様子が書かれている。しかしこれはまったくフィンランドでも(いやヨーロッパのどこでもか)起こるようなことで、フィンランドとスウェーデンの違いの例として適切とは思えない。

またある講演会の内容を、

フィンランドの小学生は3年生で英語、4年生でスウェーデン語(公用語)、8年生でドイツ語かフランス語を学んでいます。

と引用しているが、これはかなり不正確で誤解を招く言い方だ(外国語履修については⇒2月4日の記事)。が、これに対して文中で何もコメントしていないので、この本を読んでこれがフィンランドの外国語学習と思い込む人も多いのではないか。

さらにこの点に関して、苅谷氏は

発音も日本語よりずっと英語に近い

と言っているが、フィンランド語の発音は「ずっと英語に近い」とはとてもいえない。英語話者と日本語話者が一からフィンランド語を始めると、発音がいいとほめられるのは日本語話者の方だ。ヨーロッパの言語だから英語に近いという思い込みがあるのかもしれないし、他の北欧語は実際そうなのだが、フィンランド語は実は英語とまるで違うのである。

他にもいろいろ言いたいことはあるのだが、自分がフィンランドに住んでいるからか、フィンランドに関する記述や分析については誤りや不正確な点が目立つ。さらに悪いのは、文字通りに解釈すれば間違いとまではいえないが、上に挙げたように素直に読めばまず確実に誤解を与えてしまう点がとても多いということだ。

日本とフィンランドの教育の比較という点ではとても期待できる本だっただけに残念である。


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『欲ばり過ぎるニッポンの教育』(1)
苅谷剛彦+増田ユリヤ著『欲ばり過ぎるニッポンの教育』を読んだ。

ここで挙げられている「ポジティブリスト」という考え方は、「こういうことができたらいいな」と思うことをどんどん付け足していくことがなぜ駄目なのか、をすっきり説明してくれると思った。ひとつひとつの項目それ自体は良いことであっても、リストがどんどん長くなって、それを行うことで他にできないことが出てくるということだ。日本の教育改革の方向はまさにポジティブリストの考え方だと思う。良いことを付け加えるのに表立って反対はしにくいが、反面でできなくなることがあるとは気づきにくいわけだ。

日本では親が子供の教育をいつも不安に思っているという点も同感だ。これをやらないとみんなから遅れをとるのではないか、あれをやっておかないと将来困るのではないかという不安で多くのことを子供にやらせようとする。これが子供のキャパシティを超えてしまうと悲劇になる。

日本では子供の教育を学校に依存しすぎているというのもそのとおりだと思う。フィンランドは、学校の外でのことには学校が関わらない。学校以外にスポーツや地域の活動もあるし、最終的には親が学校外の行動の責任を持っているが、日本では学校外のできごとまで学校に持ち込むことには疑問に思っていた。しかも、学校というよりは担任個人の肩にずっしりかかってくることが多いようだ。

というわけで、日本の教育に関する分析については同感できることが多い。

こんなふうに学校に期待しすぎる日本の教育はたしかに欲ばり過ぎだと思う。しかも盛りだくさんな教育を、全国一律で受けられるのが当然だというのが日本人の前提だろう。日本は工業製品を一律の品質に保つことには成功したが、教育の品質を一律にするのは難しいのではないか。欲ばり過ぎなのは内容だけではなく、品質一定が当然という前提もあると思う。

さて、この本ではしばしばフィンランドの教育について触れられているが、その記述や分析についてはちょっとおかしいと思われる点が多い。次回はそれを取り上げたいと思う。

続編:
『欲ばり過ぎるニッポンの教育』(2)
『欲ばり過ぎるニッポンの教育』(3)


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第1回説明会
200702lampo.jpg


今週になって急に気温が下がってきたが、この8月から進学する中学校で生徒と父母への初めての説明会があったので -20℃の中を親子3人で行ってきた。

この中学校自体は、ときどき催しもあるのですでに何度か行ったことがある。会場の体育館には入学予定の生徒のほとんどである140人と、それよりいくらか少ない父母が集まった。

校長先生の短い挨拶のあと始まったのは、中学校進学や生活についていろんな質問を中学校の先生がして参加者の答えを集計して表示するというものだった。このために入場時にリモコンのような端末が配られていたのだ。

リアルタイムで回答が表示されるのは面白いし、生徒と父母の回答を比べたものは特に興味深かった。どの年齢で飲酒、喫煙、男女交際を青少年が自分で決められるか、などは当然ながら親子でくっきりと回答年齢の差が出てくるのだ。

それにしても、このアンケートのセッションが長い長い。終わったのは45分もたったころだろうか。予定時間の半分だ。さあこれからどんな内容が、と思ったら通学や給食やクラス分けのスケジュールにちょっと触れただけで、10分たらずで終わってしまった。

脱力…。

次回は4月半ばだ。


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特殊授業・補習授業の増加に危惧
2月5日付のAamulehti紙によれば、特殊授業や補習授業を受ける児童が増加しており、現在でも合計42%であるが、このままでは半数に達するのではないかと危惧した教育省が作業部会を設置して検討を始めた。

記事によれば、フィンランドで全特殊授業(特殊学級のようなものだと思う)を受ける児童が1997年から倍増して2005年に7.3%、部分的特殊授業で20%、補習授業は15%という内訳だそうだ。こういった授業の実施を決めるのは学校なので判定にばらつきがあり、これは12月9日にも書いたフィンランド教育庁の報告書でも触れられている。また特殊授業を受ける生徒への国からの補助が通常の生徒の50~400%増しであることも一因かもしれないという。

そこで教育相は特殊授業・補習授業の判定方法を厳格化し統一しようとしており、また特殊授業・補習授業を行う教師のための教育も充実させる計画らしい。

実際のところこれほどの割合の児童が特殊授業・補習授業を受けているとは知らなかったし、学校の話を聞くだけでは想像もできなかった。もっとも、息子もフィンランド語のハンディが大きい学科で補習授業という話になっているので、人数を1人増やしてしまっているわけだが、息子に関してはいつもやりますやりますと言いつつ実現しないのが補習授業なので、この記事の数字は本当に実施されている授業の数なのか気になる。


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英語一辺倒への危惧
フィンランドの小中学校では履修する外国語が選択できるのだが、YLE放送Aamulehti紙の報道によれば近年、選択される外国語が英語にかたよりすぎていると憂慮されている。

小学校3年生までに始める第一外国語では90%が英語を選択し、4年生または5年生で始める任意の第二外国語を履修する生徒は98年の37%から28%に下落、8年生(中学2年に対応)で始める第三外国語も履修者が30%から14%まで下がっているというのだ。

この他に、7年生(中学1年に対応)で始める第二母国語(フィンランド語児童の場合スウェーデン語、またその逆)がある。つまりフィンランドの義務教育では最低2つ、選択によっては4つの外国語を履修することができる。

ここでは適当な用語がないので外国語と書いたが、本来は Vieraskieli、つまり母語である第一言語以外の言語のことだ。小中学校で2つの外国語だけでも大変なことではないかと思うが、外国語のできる人材を育てるという姿勢はこの国ではとても強い。フィンランドは小さい国で、フィンランド語は日本語同様ほとんど国外で通じないため国民は外国語(特にヨーロッパ言語)の習得に力を入れてきたし、実際得意な人が多い。

問題になっている英語一辺倒の傾向は、世界的に英語の通用度が上がりビジネスでもまずは英語という状況になってきていることもあるだろう。だが、フィンランド政府はむしろ多くの言語ができる人材育成を考え、第二外国語の履修学年を引き下げたり授業時間を増やすようにしてきた。

ところが増えた授業時間を吸収するため4年生から第二外国語を始める学校が増え、そうすると3年生で第一外国語始めた翌年に第ニ外国語ということになり(第一外国語はずっと続く)、児童にも負担が大きすぎたのだ。こうして英語以外を選択する児童が減ると、クラスが成立する人数に満たなくなり、他の小学校へ行って授業を受けるなど不便になる悪循環で、さらに履修者が減っていったらしい。

息子の第二言語の選択もちょうど移行期のころで、ドイツ語は校内でクラスがあったがフランス語を選択したければその授業だけ近くの別の学校に行かなければならないことになっていた。息子はすでに日本語とフィンランド語と英語で大変だったので、第二外国語を履修することは考えなかったのだけれど。

今、ちょうど来年度の語学履修希望を提出する時期で、任意の外国語を履修しようとする児童の家庭はこういった状況で悩んでいるらしい。

息子の場合は選択で悩むことはないにしても、来年度から否応なしに「第二母国語」であるスウェーデン語が始まるので、これもわれわれにとっては悩みである。


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消費者教育
フィンランド消費者協会が、教育庁金融中央協会の協賛で、子供むけの「けいざいABC」というWebサイトを公開した。

小中学生が「経済」や「消費」とはどういうことなのかをインタラクティブに学べるもので、すでに授業に取り入れている学校もあるらしい。

中を見てみると、さまざまなゲームやクイズやクロスワードパズルなどがある。

ゲームは、例えば手持ち資金 100ユーロから出発して、ショッピングセンターで必要な物を次々と買ったりするのだが、ときどき「おなかがすいたので何か食べなくてはなりません」とか「○○ユーロの電気代の請求書がきました。今払いますか?」といったポップアップが出てきたりする。うまくやりくりしないと破産してしまう。

クイズは3択なのだが、問題はたとえば

携帯電話はコードがないけど電気を使う?
高い買い物をするとき、考えなければいけないことは?
リサイクルは何のためにする?
国が国民にサービスを提供するため集めるお金とは?

といったものがあり、12問セットなのだが始めるたびに違う問題が出てくる。

あらためて考えてみると、経済というのは広範囲な内容を含んでいるのものだ。子供が楽しみながら賢い消費者となるための第一歩を学べるならいいことだと思う。

どうせなら1月13日に書いたコインゲーム機の危険性についても言及してほしかったものだが。低年齢で始めたり依存症になってしまう子供も相当いるようだから。




プロフィール

Sommoro

Author:Sommoro
フィンランドに通算十数年住んでいます。家族は妻、高校生の息子、そして大型犬。

ショートカット
フィンランド三大誤解
東郷ビール フン族 サウナ
『欲ばり過ぎるニッポンの教育』
同感な点 変な点 教師の比較
学力関連
PISA 達成度 数学力 国語力
外国語教育
小学校英語 英語一辺倒 瑞語 選択肢 干渉
教科書見比べ
理科 数学 歴史
授業時間・日数
時間割 登校日数 1日多い
学級定員
長官提言 給与増の影響 動向 10年生 統計
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